top
Challenge
<<
前へ 次へ >>
その他のホゾ、構造について 7 2001.12.2記
丸胴付き通しホゾについてもう少し書いていきます。
写真のウインザーチェアなどの背スピンドルは、両側は丸胴付き通しホゾ、
中8本は丸胴付き止めホゾで組んで有ります。
この背スピンドルの組み立ては、まず座板側に一本づつスピンドルを挿し
て行きますので、ホゾ、胴付き共にわりときつめでも組む事が出来ますが、
背板(笠木)側のスピンドルは一度に全部挿しますので、止めホゾでも胴付
きが有
りますので緩めにしませんと、叩き込んでもなかなか上手く最後まで
入って
行きません。
当然緩すぎれば強度が落ちてしまいますので、その辺りのはめ合いの感
覚は、数値や言葉では表せませんので、緩めという事で色々試して覚えて
ください。
背板(笠木)にスピンドルを挿す場合、図の白矢印の寸法は背の仕様によ
り一概
には言えないのですが、段差はなるべく小さくしたい所です。ストレー
トのホ
ゾでは強度を考えるとなかなか難しい所ですが、図の様に胴付きに
する事
でかなり狭くする事が出来ます。試した限りでは1.5〜2ミリで問題無
く組む
事が出来ますし、強度、耐久性もまず大丈夫です。ただし胴つきはあ
まり
きついと背板が膨らんでしまいますので注意が必要です。
丸ホゾは少し緩めに作りますので、クサビはしっかり利かせるように、平ホ
ゾなどよりは気持ちテーパーをきつく作ります。角度の付いた丸ホゾのクサ
ビは図の様に当然センターで、ホゾに対して垂直に打ちます。またクサビの
処理は、余分な所を鋸で切り取り、後はホゾ
穴の部材の曲面に合わせてノ
ミで仕上げます。
イスなどで丸い部材の組み付けといえば、ウインザーチェアやシェーカーの
イスなどが頭に浮かびますが、基本的にこれらの丸棒は木工旋盤(ロクロ)
で作る事が一番理に適っていると思いますし、量産できますので、デザイン
や構造と相俟って普及してきたのではないかと思います。
特にウインザーチェアの脚部の構造や組み方は本当に良く出来ています。
どうすればこんな素晴らしい発想が出て来るのか、出て来るのは溜息だけ
です。木工旋盤を扱われる方は是非このタイプのイスに挑戦してウインザ
ーチェアの素晴らしさを味わってください。
またウインザーチェアやシェーカーのイスは堅木向きですし、木工旋盤は堅木向きですから、ベストマッチですが、ベ
ニマツなどの軟材は木工旋盤では綺麗に仕上がりませんので一本づつ手カンナの縦て削りで仕上げて行きますし、
強度が弱い上更に丸棒にすることで、厳しい条件になってしまいます。ただし、有る程度まで木工旋盤で加工し、最後
の仕上げを手カンナで縦て削りする方法も有ります。
しかし逆にアマチュアの方であれば、量産する事も無いでしょうし、いままで書いてきたような非常に手間のかかる作
業でも工賃を考える必要も有りませんので、十分作る楽しさを味わえると思います。デザインや構造を工夫して、堅木
や木工旋盤を使ったイスでは出せない、良い意味で削り跡を残した味わい有るマイチェアを作ってみませんか!
ここで背のスピンドルについて少し書いていきます。
イスの背もたれは大まかに、縦、横有りますが、純粋に背あたりだけ考える
とラダーバックの様な横タイプに分が有る様に思います。
上に少し書きましたが、ウインザーチェアなどは全体のバランスや、木工旋
盤を使う事で量産でき、使う部材も細い物で作る事が出来るなどから必然
的にスピンドルが良く使われたのではないかと思います。
イスの場合は特に、有る部分だけ取り出して理想を追求しても全体との関
係やバランス、デザインの好みなど色々な要素が有りますので総合的に考
えていかなければならないので難しい所です。
スピンドルの木取りは、テーパーを付けますので、特に良く目の通ッた物を
使いませんと破損してしまいます。
図のような背のスピンドルは見栄えと座り心地に影響しますので、テーパー
は非常に重要になります。おおよそ図の矢印3点の寸法で背もたれのカー
ブが決まりますので、良く検討する必要が有ります。特に赤矢印(中太)の寸
法は1、2ミリの事で全体のプロポーションに大きく影響しますし、座り心地か
ら考えるとランバーサポートを利かせるために、なるべく太めにしておきたい
所ですから、この辺りのバランスが難
しい所です。
この中太の位置はランバーサポートと同じ、お臍の後ろ辺りにするのが良い
と思います。黄矢印の背板に挿す部分は可能な限り細くしておくと、非常に
スッキリしたプロポーションになります。
一般的に見かける背のスピンドルは、全般黄矢印部分が太めで、赤矢印部
分の膨らみも少ないように感じます。
またスピンドルの長さや背板の形状をどうするか、スピンドルの間隔や本数
はどの程度にしてすわり心地とプロポーションのバランスを取るか、座とスピ
ンドルの傾き等を総合的に考えて行きますので、イスの場合は原寸図を描く
と考えやすいと思います。この辺りも前に書きましたように、文章にするとや
やこしく感じますが、まず一脚作れば色々問題点が見えてきますので、後は
これを叩き台として改良を繰り返して行けば、いつの間にか質の高いイスが
出来てしまう様になります。当たり前ですが、これが質の高いイス(家具全般に
言えますが)を作る一番の方法です。
<< 前へ Page top 次へ >>
|