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引き出しについて 2001.10.18記
引き出しは大きく分けて、前板を前に出してかぶせる方法(OUT SETと
かっ
てに呼んでいます。)と中に入れて面を合わせる方法(IN SETとかってに
呼んでい
ます。)が有ります。
OUT SETは引き出し口が見えませんので、前板の加工は楽になりますし、
前板が引き出しのストッパーになりますので、調整の手間が省けます。
構造上、当然前板より側板、後ろ板は幅狭になりますので、組み立てた後
では引き出しの調整が出来ないので非常に精度を出すか、多少ガタが出
ても小さめに作ることになります。また見かけよりは
引き出しの有効深さは
浅くなります。この事から前板と側板の接合はアリ
組みや包み打ち付けが
難しくなりますので、ダボ接ぎなどの工法になりま
す。このダボ接ぎは簡単
に見えますが、丸穴を正確に開ける事は非常に
難しい作業で、高価な工作
機械で無ければまず無理です。(個人で作るには
ダボ接ぎよりもホゾ接ぎのほうが手
間はかかりますが正確に作ることが出来ると思います。)
また前板の厚みがそのまま出ますので、ゴテゴテした感じになります。その
ため安全や見栄えを良くするために、前板の面取りを工夫したり、IN SET
の引き出しを作っておいて、薄目の前板を接着するなどの工法になります。
これらの事から、OUT SETの引き出しは、工作機械を多用した量産向きに
なりますので、一般の量販家具店で良く見かけると思います。
IN SETは引き出し口に面一でスッポリ収まるように作りますので、引き出し
口と前板のすき具合や面合わせは、なかなか神経を使う作業ですが逆に
考えれば、作り手の腕の見せ所であり、気の使い方や技量が出る所でも有
ります。
外観はシンプルでスッキリした雰囲気になります。構造上、前板と側板の接
合はアリ組みや包み打ち付けが合いますので、丈夫な引き出しが出来ます。
また引き出しは、大きめに作っておいて少しずつ削りながら調整していきま
すので、工作機械を多用した量産向きでは無く、アマ、プロ問わず個人や
小規模で作る方向きで、またその良さが出せる工法ですから、工房家具や
無垢の家具などはこのタイプが多いと思います。
引き出す構造も大きく分けて、受け桟と吊り桟の二種類有ります。
(スライドレールは吊り桟と考えて良いですがここでは除外します。)
受け桟は引き出しの受けを側板の上下に、両サイドにぶれ止めの桟を取り付け、そこに引き出しを滑らせる物で、
本体構造に組み込んで作って行くことが多いので製作に手間がかかりますが、その分本体の強度は上がります。
また引き出しの側板は薄くすることが出来ますので、引き出し自体は軽く出来ますが、引き出しのストッパーは後面
に取り付けますので調整は少し手間がかかりますし、ストッパーのスペースが要りますので、引き出しに奥行きがそ
の分短くなります。また前板上端には前板が伸びた時のために少しスペースを空けますが、下端が基準面で隙間
が有りませんので少し上端のスペースが空いた感じになります。
吊り桟は引き出しの側板の両サイドに受けの溝を掘り、そこに入る桟と両サイドにぶれ止めの桟を本体に取り付け、
そこに引き出しを滑らせる物で、本体を組み立てた後に、吊り桟などを取り付けて行くことが多い(組み込むことも出来ま
すが)ので組み立ては少し楽になりますが、本体強度は少し落ちます。また引き出しの側板は溝を掘りますので板厚
を少し厚くしますから、引き出し自体は少し重くなります。引き出しのストッパーは、吊り桟の前部が兼ねますので調
整は容易ですし、引き出しの奥行きは本体内部の有効寸法いっぱいまで伸ばすことが出来ます。気持ち出し入れ
がスムーズに感じます。また前板が伸びた時の上下スペースは吊り桟上端が基準面になり、上下に分割してスペー
スを取りますから、それぞれのスペースは狭くなるので外観は良いと思います。(吊り桟の位置により変わりますが)
どちらの方法でも優劣は有りませんので、家具を見たり、購入を考える時にはそれぞれの特徴を参考にしていただ
けたらと思います。
私の場合は引き出しの奥行きを少しでも長くすることを優先して、前項の写真に有るような、IN SETの吊り桟で作る
ことが多いです。(製作についてはいずれChallengeで)
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