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イス雑感 16 2003.2.12記
もう一つ丸棒を使った椅子ですと、良く知られたところではシェーカーチェア
が有ります。
シェーカー家具はカントリー家具と言われている物の代表的な家具の一つ
だと思いますが、キリスト教の精神が下地に有りますので、一般庶民から
見れば有る意味ストイックと言うのでしょうか、禁欲的に写る生活をしてい
たでしょうし、教団として自給自足のスタイルをとっていたようですから、自
分たちが作ったもので生活するために家具を作ることになりますが、自分
たちの精神を生かした作り方、デザインを考えて行きますから質素、素朴
ではありますが、独特、独自のスタイルが出来上がってきたように思います。
轆轤(木工旋盤)を使った家具が多いですが、量産を考えれば自然な有り
行きですし、部材もシンプルで材料も少なくて済みます。
椅子で言えば丸棒
の組み合わせですから、轆轤でひいて丸穴を空けるだけで組み上がります。
こうしたことがシェーカー家具の独特のスタイルを作り出し、多くの人がその
スタイル、精神に魅了されたのでしょう。
丸棒(スピンドル)はウインザーチェアでは装飾的な加工や色々なバリエー
ションが有りますし、本家のイギリスとフロンティア精神のアメリカでは、そ
の趣が随分違いますが、シェーカーチェアにおいてはその精神的背景から
だと思いますが、装飾的なものを排除したストレートの丸棒で構成されてい
ますし、座面もテープ編みなどで背板も曲げ木で構成されていますので、
材料、
加工効率、構造、外観などのからその精神的背景を感じさせる非
常にうま
くまとめ上げられた椅子に仕上がっています。
背部は少し工夫は要りますが、ストレートの丸棒と丸穴加工で構成された
ところは、まさしく木工旋盤のための椅子のように感じます。
何度も書いているように椅子はその性質上、人により大きく評価、好みが
分かれることが多いと思い
ますが、シェーカーチェアを純粋に椅子としてだ
けみて行きますと、精神的背景からか
ストイックと言うか禁欲的な生活が
根底に有りますので、材料の使用量、有効利用、加工の容易さなどがか
なり重要視されて椅子を作っていたのではないかと想像します。そんなこ
とから背を伸ばして行儀良く座る椅子になって来た気がします。
今の自由でラフに座る生活では、背が立っていますし座と背の角度を大
きく取っていませんので非常に窮屈で、足元も貫が邪魔になりますから今
の時代では本当に実用的に優れた椅子とは言えない部分も有るようによ
うに感じますが、勿論これは私の見方ですが、歴史的背景も含めて見て
行きますと素晴らしいものが有るのは確かです。
ただ後ろの脚をくの字にするなどして背当たり部分を少し改良していけば、
木工旋盤で簡単に加工出来なくなりますが、座り心地もよくなるでしょうし、
実用的で快適な椅子になるのではないでしょうか。
今は形ばかり追う傾向に有りますので、なんか?だなと思いますが、本当
のアノニマスを考えていけば、不変の形は無いのではないかと思います。
時代、社会が変われば生活スタイル、考え材料、道具全てが変わりますの
で、形だけに固執していてはその時代に一番適したものからずれてきてし
まうように思います。
あくまで真似るのはその素晴らしい精神で、形はそ
の時代にあったものを「今」作り出していくことが一番だと思います。
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