−ボディ改造編−
前置きはそれくらいにして本題に戻る. 前述したようにボディの”材”は結構良かったが,いかんせん塗装が分厚かった.このままでは材の良さを生かせない可能性があるため,塗装を薄くして鳴りを向上させたい.うむむ…? さらに加えて,”Relicの技術というものにエンジニ〜ア魂が反応”してしまった.うぉぉぉ…. 所詮ダメもとだ.お遊び半分でやってみよう! (やはりそう来たか…) ということで,デザイン検討. 部屋を見渡すと”ストラト本”を発見.こいつは,ストラトばかり載ってる本で,オールドの写真もたくさん載っている.参考にすることにした. いろいろ検討した結果,参考にしたのは写真9右頁のサンバーストの剥げ方です.(写真が小さくてよく見えないけど,お後のお楽しみ?) よし,紙やすりやスクレイパーを準備.いざ作業開始だ! |
![]() ↑写真9 加工前のボディと,参考にしたストラト写真.キレイなボディなので,結構迷いました. |
第8章 よし!塗装をはがすぞ
少しもったいない気がするが,塗装を薄くして音質向上する目的もある.思い切って作業開始!
まずは,ボディー表裏などの”部分的な塗装剥げ”を再現することに.なぜ最初にしたかと言うと,”塗装の厚さの目処付け(全体的に薄くするときの目安?)”のためと,”自然な剥がれを再現(後から全体を処理〜段差を埋めたほうが感じが出る?)”しようと考えたからだ.
記念すべき(?)最初の加工は,エルボー(表面のひじのあたるところ)だ.まずは紙やすりで削ってみる.白い粉がいっぱい出てきたが安心できない.ヘッドのときも分厚い塗装に悩まされたからなぁ.しばらく削り続ける.・・・案の定,塗装は分厚かった. 仕方ない,彫刻刀などで塗装を剥がしてしまおう.(おぉ〜) 今回ボディーに施そうとしている処理は”ぶつかって剥がれたような感じ”で,ヘッドとは要求が異なる.多少段差があったりしても問題ないだろう.逆に”らしく”なるかもしれない. え〜い,やってしまえ〜! ボディーは,クリア塗装の下にサンバーストの塗装がしてある.まずは,クリア塗装部分を彫刻刀でチビチビと剥がしていった.塗装は分厚かったが,ドライヤーなどで暖めると比較的簡単にはがすことが出来た.(といっても苦労したけどね.右写真上の状態). そしてサンバーストの塗装を紙やすりで剥がすと,なんかいい感じになってきた.結構いけそう! |
![]() ↑写真10-1 クリア塗装だけを剥がした状態.彫刻刀で,少しずつ塗装を剥がしていった. ![]() ↑写真10-2 サンバーストの塗装を紙やすりで落とした状態.お〜,何となく弾きこんだ感じが出てきたではないか….ムフフ |
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調子にのってきた.まずは全体のイメージを掴みたいので,最終仕上げは後回しにして,ある程度できた時点で他の部分も処理していくことに. 次にやったのはボディー裏だ.大概のオールドギターは”ベルトのあたる部分”がかっこよく剥げている場合が多い.ここも同じように処理していく. う〜んだいぶ感じが出てきた.前述のストラト本のオールドギターを参考に,”ボディー表面のピックのスリキズ”や”ボディーサイドの剥げ”など再現していく. 結構おもしろいのね,レリック作業って.(ヒマやないどぉ〜) |
←写真11 ボディー裏の処理(途中).あとは剥げの境目を自然な感じに仕上げていくだけだ. |
だいぶできてきたところで,さらに欲が出てきた.”クラック入れ”だ.クラックとは細かい塗装のヒビのことで,ラッカー塗装のオールドギターによく見られるヒビだ.つぎはこいつだ!
第9章 キタナイことが美しいのだ!
”剥げ”やら”ヒビ”やら,なんでそんなに汚くするの?と言われそうだが(実際,嫁はんにも言われた),塗装の剥げなんかは”ギタリストの夢:オールドギター”の象徴だしね.ブランド物のコピー商品みたいなもんで,”音”はムリやけど”百戦錬磨の風貌”だけでもマネしたいっていう感じかなぁ.まあ,タダ同然のギターだったからできることやけどね.
−ウンチク−
ということで,本題に入る前にウンチクを.(インターネットでいろいろ調べました)
前述のように”クラック”とは塗装のヒビで,経年劣化の象徴みたいなもんかな.ウェザーチェックとも言われてるみたい.なぜそんなヒビができるかというと,簡単に言えば寒暖の差かな.塗装も木材も大概のものは「寒くなると縮み,暖かくなると膨張」するのは知ってると思うけど(YN君は年中,膨張している),例えば木材の膨張度合いの方が大きいと,塗装のほうがパリンとヒビが入ってしまうみたい.最近のギターは”ポリエステル”という柔軟性のある塗料のためヒビは入りにくく,昔は”ラッカー”という硬い(柔軟性のない)塗料が使われてたので入ると言われてる.と言うわけで,オールドにはヒビが入ってることが多いのだ.但し,ヒビ自体は必ずしも音の良さには比例しないみたい.(ラッカー塗装が音が良い(音の振動を妨げない)らしい)
−作業開始− なんでこんなウンチクを語ったかというと,今回クラックを入れる作業を説明するためなのだ.ようは”寒暖の差を強制的に加えれば,クラックが入る”ということなの.いろいろ調べると,エアダスター(埃飛ばし用の空気の出るスプレー)をひっくり返して吹くととんでもない冷たい液が出て,それで強制的に冷やすとヒビが入るって寸法なのよ.”冷蔵庫に入れる”とかいうのもあるみたい.結構みんなやってるな〜. 今回のギターはポリエステル塗装のため(たぶん),ラッカー塗装を施さないとクラックは入らない.ということで,ラッカースプレー(クリア塗料)を準備し上塗りを開始.(第6章ヘッド部分作成部分で紹介した”レリックに必要な塗料”とは実はラッカーなの) −実は・・・− 結論から言うと,この方法は失敗したので簡単に説明しておきます.ヘッドと同様に薄く何回も塗り重ね仕上げたものの(写真12参照),冷却させてもヒビが入らなかったの.ガガ〜ン!(ギターにはニトロセルロースというラッカー塗料が使われているらしいが,市販のスプレーにはノリをよくするため,いろんなものが含有されているみたい.それが原因?) しかし,不幸中の幸いで,おおもとの塗装にはヒビが入ったの.???ラッカーじゃないのに何故かなと思ったが,どうも鳴りを良くするため”ボディー全体の塗装を薄くすべく削っていた”のが幸いし,塗装に十分な柔軟性がなくなる〜ヒビが入ったのかなと推定.まあいずれにせよ,結果よければすべてよしということで,せっかく塗装した部分を剥がすことに.(涙) かなり空しかったが,ただでは転ばんぞ!極限まで塗装を薄くしてやる!剥がした部分(肘の当たるところなど,木の地がでている所)から塗装の厚さを推定し,慎重に全体を研磨していった. 結果的にこれが音質向上に役立つとは,このときはわからなかった. −再チャレンジ− ようやく剥がし完了.試行錯誤の連続で,遠回り&苦労はしたものの,なんとか目処がついてきた.塗り重ねた塗装を剥がした後(涙),早速ヒビ入れ作業に! 早速冷却スプレー照射!液体が噴出〜ボディにかかったと瞬間に,凍って霜状に.それと同時に”カツン”という音が(ピキッという音ではないよ).これが塗装の割れる音だ.霜を取り除いて見ると,”おぉ〜,見事にクラックが入っている!” 調子にのって,ボディ全体に施す.おもしろいくらいに幾何学模様のクラックが入る.しかも,光の加減で見えたり見えなかったりして,主張しすぎずなかなかよろしい.(ハタから見たらアブナイ人に見えそう) ということで,紆余曲折があったが何とかクラック入れ作業は終了!ボディ関係はひとまず完だ.長かったし疲れたな〜. 次回は,ピックアップなどの電装部品を改良だ! |
![]() ↑写真12 ボディをラッカー塗装〜研磨中の写真. こんなに苦労したのに・・・(涙) ![]() ![]() ↑写真13 完成後の様子. ボディに見える”白いスジ”がクラック. なんか”らしく”なってきた.かな? |