MORYもメンテナンスしたぞ!のコーナープロジェクトMORY


第1章 MORYもメンテしたかった・・・

初代愛器であり自作ギターで愛着もある”MORY”だが,数年前にふと弾いた時,Fr.PUが鳴らないことが判明.SWの接触不良かなと考え,接点復活剤(CRC556)などでいろいろ修復を試みたが治らない.もしや・・・と思い,ピックガードを外しテスターでPUの抵抗を測ってみる.げっ・・・断線していた!ガガ〜ン!こいつはディマジオのPAFで,好きな音やったのに〜〜!(ちなみに高かった.大学時代に購入&取り付け.ご存知のように超ビンボーだったので,思い入れが深い).
ということで,ショックと”鳴らないPUが積んであるギター”ということもあり,長らくお蔵入りになっていた.でもいつか治そうと,機会があるごとに中古のPU(お買い得なハムバッカー)を物色していたのだが,今日までなかなかいいものが見つからなかった.

”MORY”はギター紹介の項でも記述したように,レスポールサウンドがほしい時に使っていた.ハムバッカーを探していたのはそのためである.しかし最近のアンプツアーにおいて,シングルコイルのFr.PUの良さを再認識した.うむむ・・・シングルでもいいかな・・・優柔不断なMORY.
先回愛器TEXASをメンテしてスッキリしたこともあり,何とかこいつも復活させてあげたい.何かいい手はないだろうか.

ひとつだけ考えていることがあった.いっちょやってみるか.


第2章 ハムバッキングPU?

皆さんご存知のように,ハムバッキングPUとは「2つのシングルコイルPUが合体」したようなものだ.電気的に言うと,2つのPUを直列に繋げてあるだけだ.ん?ということは・・・・,下記の思想が頭をよぎった.
  ●「シングルコイルPU×2≒ハムバッキング」になる?おぉ〜我ながら天才!
  ●でもなぁ,2つ繋げて試してはみたいものの,身近には試すようなPUがないなぁ.
  ●あっ!HARD OFFのジャンクコーナーで「シングルコイルPUが\700/1個」で売ってたぞ!
  ●よし!実験がてら試してみるには丁度いいぞ!質屋ツアー効果だ!
  ●音質などに欲が出たら,その時に”いいPU”を探せばエエやないか!
早速,足はHARD OFFに向かっていた.

店に着き,ジャンク(がらくた)コーナーへ.おぉ〜あった.30cm四方くらいのプラケースに無造作に放り込んである.きっと売り物にならんようなギターから外したものなのだろう.
2個購入すべくレジへ.店員いわく「これはジャンクなので作動保障対象外になりますよ」.そんなことは百も承知.う〜ん早く試してみたい.(ちなみに値切らなかった.エライ!)

家に戻り早速作業に入る.まずは断線チェックのため,テスターにて抵抗を測る.よし!断線してないぞ!音の善し悪しはあるだろうが,何とか音はなるはずだ.よ〜しやるぞ〜!

この時は,後々起こる様々な苦労を知る由もなかった.
1個\700なり〜!
↑写真1
購入した2個のシングルPU(ジャンク品)


第3章 そして分解〜搭載!

よ〜し,搭載するぞ!弦を全て外し,ピックガードのネジを丁寧に外していく.久しぶりに開けるので,やや緊張.いざご対面〜〜!おわっ!えらいボディーが焼けてる.そりゃそうやな,17〜18年も経ってるもんな.

まずは,断線したFr.PUを外す.長年の垢のためか,ネジが錆付いていたり,曲がっていたりして苦労しながら外す.

さ〜てここからが本番だ.今回考えていたのは,通常のハムバッキングPUと同様,2つのPUを逆位相にセッティングするつもりだ.
ここで逆位相についてウンチク.通常PUのコイルは同じものなら磁石に対し同じ方向(例えば:時計回り)に巻いてある.2つ並べる際に,同じ方向なら同位相,ひっくり返すと逆位相と呼ばれる.こうすることで,ノイズの波形が逆になり,お互い打ち消しあって低ノイズとなるの(出力もやや落ちてしまうけど・・・).巷ではハムキャンセラー効果とも言っている.ハムバッキングPUが低ノイズなのは,こういう原理みたいよ.

ということで,話を元に戻す.
2つのシングルPUを搭載すべく,まずは位置決め.幸いなことに,PUを2つ並べた状態(逆位相&PUカバーあり)で,先ほど外したピックガードのスペースにすっぽりと入った.よし,幸先いいぞ!
♪小麦色の肌〜♪(by 郷ひろみ)
↑写真2
まるで水着の痕のように,ピックガードの部分だけ
真っ白だ.きゃ〜セクシ〜!
まずは1個目搭載! 位置が決まれば,あとはPUを固定するための”ネジ穴”を空けるだけだ.もともと左右対称に1個ずつ空いていたが,2つのPUを搭載するので,2個ずつに開けなおさないといけない.
鉛筆でマーキングし,割れないよう慎重にドリルで穴を開ける.ピックガードは樹脂製なので,簡単に開けることが出来た.

いざ!PU搭載!わくわくしながら,ネジを通し締め付けていく.おぉ〜,なんかかっこいい!いい感じだ!そして2つめも取り付け.うんうん,見た目も通常のハムバッキングみたいだ.
←写真3
まずは1個,取り付けたところ.なかなか感じエエやないの.左に転がっている白いPUが,取り付けを待つ2つ目のPU.その上に転がっている肌色になったPUが,断線してしまったハムバッキングPU.今までありがとね!

まずは,ピックガードへの搭載は大成功!あとは配線とボディーへの搭載.配線に関しては,ひとつ試してみたいアイデアがあった.う〜ん,わくわくする.逆に,ボディーへの搭載は不安なところがあった.
よし,頑張るぞ!


第4章 いざ配線!

冒頭にも書いたが,最近シングルの”歯切れのある音”が妙に気に入っている(やっぱアンプのせい?).とは言っても,ハムバッキングの”マイルドでパワーのある音”も大好きだ.う〜ん・・・迷う.

ナ〜ンチャッテ,実は両方実現するアイデアは既にあった(成功するかはわからないけどね).ギターコーナーでも書いたけど,愛器MORYは「ハムバッキングの配線を改造&ミニスイッチでコイルの組み合わせを変えられる」ようにしていた.でも実際の音はというと,シングルの歯切れは出なかったの.やっぱ,ハムバッキングの片方のコイルというだけではいかんのかなぁ.
で,今回は”ホンモノのシングルPU”を使ってハムバッキング化させるため,シングルの音は良くなるに違いない.問題はハムの時どんな音がするか・・・かな.

よし,本番だ.電気的なことを書くとマニアックになりすぎるので(オレもあまり知らんけど・・・),簡単に原理を書いておきます.
例を挙げると,”電池と豆電球”をイメージしてもらえばわかりやすいかな.昔,小学校でやった「電池を2つ直列につなぐと,豆電球がより明るくなった」よね.ここでいう電池が”PU”,豆電球が”出力”にあたると考えてね.(もちろん,正確じゃないけど)
(1)電池のプラス・マイナス極に豆電球をつなげると光る.
(2)電池2個を直列につなげると(電池1のマイナスと電池2のプラスをつなげる),豆電球はより明るく光る.
(3)豆電球のマイナス側を外し,2つの電池の真ん中につなげると,電池1個分しか電気が流れないので最初の明るさに戻る.
(4)スイッチで上記を切り替えると,豆電球は明るくなったり暗くなったりする.

イメージはつかめるかな?まあこんな感じです.さらに付け加えると,
(5)スイッチで”1個目の電池のみ”と”2個目の電池のみ”,さらには”両方の電池”と3パターンに切り替えられるよう配線.

ギターで言い換えると,”ネック側のPU”と”ブリッジ側のPU”,そして”両方のPU(=ハムバッキング)”のように切り替えられるようにしたのよ.わかってもらえたかな?
間違えないように配線したよ!
↑写真4
写真上側が,今回つけた2つのシングルPU.
このようにややこしい配線を施しました.とはいっても,原理は本文にあるように至って基本的なもの.


とまあ,注意しながら配線&ハンダ付け.配線が間違っていないか確認すべく,シールドをアンプに突っ込み,スイッチを切り替えてポールピースをドライバーなどで叩いてみる.
切替スイッチをFr側に倒すと,Fr側のPUのみ音が鳴り,Rr側でも同様に鳴った.そしてスイッチを真ん中にすると,Fr・Rrとも音が鳴った!よし,大成功だ!通常のPUセレクターと同様,切替スイッチで前後2つのシングルPU(個別の音とそれらをミックスした音)が切り替えられるようになったのだ!!

う〜ん順調!しかし大きな問題に気付いたのはその直後だった.


第5章 ボディーに搭載!

よし,これでピックガード側は完成だ!写真4の状態では,配線などがボディ間に挟まってしまうため,きれいに束ねて,いざ搭載開始ぃ〜!

ガ〜ン!入らない!

そう,大きな問題とはこれだった.PUがボディのザグリ(キャビティー.PUの収まるスペース)に収まらなかったのだ.原因は,それぞれ逆位相に組み付けたPUだ.
細かく説明すると,まずシングルPUの形は長方形ではなく,どちらかというとホームベース型だ.それを逆位相に組み付けたものだから,2つのシングルPUは”六角形を引き伸ばしたような形”になっていたのだ(写真4のFr側PUを見て〜).はぁ〜.さらに悲惨なことに,ボディのザグリは長方形型.入るはずもない.

・・・♪うすうす感じて,いた〜けれ〜ど〜♪(秋止符 by Alice)・・・ (涙)

入らないものは仕方ない.気を取り直してザグリを拡げることに.
「え〜い,もともとストラト(シングル3発)のボディを削って,2ハムバッキングを搭載したこのオレだ!出来ないことはない!」・・・と,前向きなコメントながら,はんばヤケクソ気味.(しかも,昔やった時は大学時代で,時間を湯水のように使えていた頃だ.オーマイガ〜!)

ハンドドリルでいくつも穴を開け,カッターナイフ&彫刻刀でその穴を繋ぐように削る.あ〜指痛いぃ〜!この歳になって彫刻刀なんて〜!

何回もPUをはめ込みながら,あたっている箇所をマーキングし削っていく.地道な作業だ.(決してヒマではないぞ!)
これが終わると完成だ.それだけが心の支えだった.延べ3時間くらいかかって,なんとかハマった!よっしゃ〜〜〜!
→写真5
必死こいてボディのザグリを拡げているところ.ハンドメイドの真骨頂だ!(涙)


最終章 ついに完成!

ボディーにハマりさえすればこっちのもんだ.ピックガードアッセンブリーを搭載しネジ留め.弦を張る.

↑写真6
こんな感じです,見た目もなかなかイケてるでしょ?
↑写真7
ジャジャ〜ン!ようやく完成だぁ!

PUセレクタをFrにあわせ,早速試し弾き.

ミニSWを中央(写真6の@とAが両方鳴る)に設定し弾く.
→うぉ〜ハムバッキングの音だ.すごく粘りがあって甘い音!

う〜んいい感じだ.今度はミニSWをヘッド側(@だけ鳴る)に設定し弾く.
→まさしくシングルコイルの音だ.歯切れがありSRVなんかもイケるぞ!

よしよし,今度はミニSWをブリッジ側(Aだけ鳴る)に設定し弾く.
→こっちも歯切れがありGood.でも@とは少し違う音質だ.逆向きなのがきいてるのかな?

よし,大成功だ!

ちなみに後日,YN君がMORY邸に遊びに来た時に聴いてもらった.(このHPで公開する以前だったが,この感動を分かち合う(押し付ける)べく,聴いてもらった).
YN君曰く,「ハムバッキングも遜色ない音質で,シングルもそのままの音になっている.安いPUといえ侮れんナ〜」との論評を頂いた.
いつものMORYであれば,「何をエラそ〜に」とシバキあげるところではあったが,作品を褒めてくれたので普通に接することができた.(笑)


<あとがき>
まあ,お遊びみたいな企画やったけど,安く修理できたし無事復活できたのでよかった.またいつの日か,Liveで弾いてあげよう!


<<完>>